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第6話 癌を治した猫

ちょっと話が飛んでしまうが、私は今年の10月、信じられない事例に出会った。当院に通院していらっしゃる方で、女性52歳(M.O)さんに起きた出来事である。

この方は、乳癌が脊椎、骨盤骨、そして大腿骨に転移し、抗癌剤もホルモン剤も効果なく、病院側からはこれ以上の近代医療における治療法はないと宣告を受けて、骨転移による痛みについても鎮痛剤で対処する日々であった。当院には24年の7月から来院されていたが、当初の腫瘍マーカーは、当然ではあるが高値を示していた。

(NCC-ST-439が24年8月で13.3↑、9月で17.7↑、10月で19.2↑、11月21.6↑、25年2月で35.5↑の上昇傾向である)

私も医師として常識的には、厳しい状況であると認識をした。

正直言って、話に困った。軽はずみに希望を持たすことも気休めを言う事も許されなかった。しかし、たった1つ、共通の話題があったのである。それは患者も私も互いに日本一を競うくらいの猫キチであったことである。当然、携帯電話に入っている愛猫の写真を自慢し合い、診療時間は全て猫談義に費やされた。患者さんはいつも言っていた。

「私、猫を飼いたいんです。でも、私は癌で骨まで転移している身だから、いつまで生きられるか……。」

25年の6月に来院された時、私は患者さんに言った。
「とにかく早く猫を飼いなさい。万が一にも貴方に何かあったら、その猫ちゃんは私が責任を持って育てるから」と。
とにかく、なんとか飼ってもらいたいという一心で、咄嗟に出た言葉であった。

その後、その患者さんが来院されたのは10月である。その時、7月、8月、9月、10月分の血液検査の結果を持参された。なんと7月以降腫瘍マーカーが下がっているではないか。しかも急降下しているのである。

患者さんは6月に来院された後、念願の猫ちゃんを飼ったのである。ある時は4時間も自分の膝の上で寝て、トイレにも行けなかったと。またまた猫談義が始まった。こっちは腫瘍マーカーの話や、今、通院中の近代医療の主治医はこの結果を見てなんと言ったのか、いろいろ聞きたいのに、出てくるのは猫ちゃんの話ばかりである。ようやく猫談義も一段落して、主治医の発言についての話になった。

主治医は次のように言ったそうである。
「どこか別の病院で治療を受けていますね。さもなければ、こんなに腫瘍マーカーが下がる訳がない」と。
もちろん患者さんは、他に通院して治療を受けてはいないし、必死にそのことを告げ、
「ただ猫ちゃんを飼いました。その事はとても私の心の癒しとなっています」と、付け加えたそうである。
主治医は「それは関係ない」と一笑に伏したようであるが、人間には、もちろん「体の免疫」は重要であるが、もうひとつ「心の免疫」も忘れてはならないものなのである。

よく「落語を聞いていたら癌が治った」という話を聞くが、それと同じである。落語を聞いての感動、猫ちゃんを飼っての感動。「感」の字が我々の「心の免疫のスイッチ」を入れてくれるのである。「体と心は一体である」とよく言う。しかし日常どこまで我々は本気でそう思っているのだろう?
「体の免疫」は大事にするが、「心の免疫」についてはどうだろう。

血液検査等で、体の情報については知る機会も多いし、気をつけもする。しかし、心の体に対する影響力、作用についてはどうであろう?
ストレスが血液検査で測定できないのと同様、「心の免疫」も科学的に証明することは難しい。しかし、「心の免疫」は確実に存在するのである。
またまた、患者さんに教えられた一例である。

<その患者さんの猫を飼った後の腫瘍マーカー値>
7月9.7↑、8月8.3↑、9月7.1↑、10月6.0正常域に入る、11月5.2、12月3.2
(NTT-ST-439の正常域は7.0以下である)