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第30話 ビタミンCを考える


歴史 

2003年、アメリカ国立衛生研究所は、ライナスポーリング研究所を補完代替医療の研究拠点に指定した。 この研究所は微量栄養素に関する非常に幅広い研究を行い情報公開していることで有名であるが、もっと有名なことは ノーベル化学賞を受賞したライナスポーリング自身が毎日一日当たりの推奨摂取量の30倍ものビタミンCを摂取していたことである。

ポーリングは1970年に分子矯正医学を世に広めた人物で同年に「さらば風邪薬 ビタミンCで風を追放」を出版して大きな影響力を与えた。

分子矯正学とは、体内に通常存在する人体の生命維持に不可欠な物質を使ってその体内濃度を操作し、良い健康状態を維持しようとする医学的アプローチのことである。 ビタミンCは元より壊血病というというビタミンC不足から来る血液疾患、その予防のために必要と考えられていた。 多くの人は食事である程度ビタミンCをしっかり補給しているため壊血病になることはなく、このことがビタミンCの擁護目的ではない。

ポーリングや他のビタミンC擁護者は、次のことを主張している。

++彼らがビタミンCの大量投与を勧めているのは超健康のためである。「超」いかなる病気も出さないということらしい。 ++感染症にかかったばかりの段階でビタミンCを大量に投与すれば病気の進行が抑えられると言っている。

軽い風邪の場合、ビタミンCの擁護者であるロバート・キャスカート医師は、24時間毎に30〜60gのビタミンCを摂取することを勧めている。この量は、一日700個以上のオレンジを食べて初めて摂取できる量であるので現実的には不可能な話である。

ビタミンCの効能は風邪のときに話題となることが多いが、キャスカートやポーリング達のビタミンC擁護者は感染症から心疾患、癌にいたるまで様々な病気に対してその大量投与を勧めている。

効能 ビタミンCは体内に触媒のように作用し、多くの必要な化学反応を促進し誘導する。 さらに、細胞代謝による自然な老廃物を解毒し抗酸化物質のように働く、つまりビタミンCは、フリーラジカル(活性酸素)の里親のような働きをする。 ビタミンCは、自分の分子にフリーラジカルを吸収させ正常な細胞を損傷させないようにする。要するに厄介なものを、自分の懐にとらえて、外に出さないようにするわけである。 2003年、(アメリカ栄養学会誌」に掲載された研究によると「人間は生きていく為にビタミンCを摂取しなければならない。ビタミンCがフリーラジカルを捕獲できるのは電子供与体であるが為である。ビタミンCのような抗酸化物質は、細胞の酸化的な損傷が原因で生じるアテローム性動脈硬化や癌などを防ぐことが判明している。」と記されている。 しかし、この研究では癌を撃退するための必要量までは示されていない。

2008年、イギリスの大学、ポルトガルの大学でも、分子レベルでのビタミンCの作用が報告されている。

また、2009年、カリフォルニア大学が心臓病疾患のCRP(体内の炎症反応)値が、ビタミンCの大量投与することで低下することを発表している。

++ 癌治療に関して 癌治療におけるビタミンCの大量点滴投与は、現代医学からはかけ離れた治療法であるが、2005年アメリカ国立衛生研究所は、その効果を認めている。抗癌剤のような副作用が殆どなく、しかも抗癌剤と併用することで副作用も軽減されるということで、今や、アメリカでは10000人以上に及ぶ医師が臨床治療に取り入れている。

ビタミンCを血液中に大量投与することで癌細胞が死滅することは解糖系優位の癌細胞の性質(*)と関連したメカニズムである。(*)この件について早急に別の話の中でご説明申し上げたいと思う。 ビタミンCは食べ物から摂取した糖を細胞内に取り入れる際に使われる。この取り込みに使用されたビタミンCは酸化してしまうため、細胞内のミトコンドリアで処理しなければならないことになっている。 しかし癌細胞にはミトコンドリアが少ないという事実がある。(正常細胞の1/4程度である) その為参加した使用済みビタミンCを処理できない状況となり、ビタミンCを大量点滴投与すれば癌細胞にのみ酸化物が蓄積していくことになる。 その結果、他の細胞に悪影響を与えることなく癌細胞だけを選択的に死滅させることができるわけである。 しかし、この療法は、癌細胞が生成させるメカニズムにストップをかけるものではない為、圧倒的な効果を期待することは難しい。

とにかく癌細胞の分裂、増殖は速い。分裂、増殖するために糖分をより多く必要とし、取り込む。 このメカニズムを利用したのがPET検査である。また、別の意味からすれば、糖の取りすぎは癌化、さらに分裂、増殖を促すことになるわけである。確かに糖尿病は癌体質である。 食事療法の多くがその制限をしていることにも納得していただけるだろう。だから癌患者さんのHbA1cとは、2ヶ月間の平均血糖レベルで糖尿病の指標である。

一日当たりのビタミンCの推奨摂取量(RDA)。アメリカ国立衛生研究所においては最低量を60〜100mg(オレンジ一個分が60mg)としている。 食事で100mgを摂取することは簡単であるが、大事なのは毎日続けることである。ビタミンCは水溶性なので過剰に摂取して体内に蓄積させることは出来ない。(主に尿中に排出) しかし、ライナスポーリング研究所は、ビタミンCのRDAは少なすぎるとし1日当たり、状況に応じて何千、何万mgの大量投与を推奨している。

これ程の量となると、サプリメントからビタミンCを摂取するしかないが、サプリメントからビタミンCをどの程度吸収できるかは一定ではない。錠剤から摂取できる栄養素は製品によってはほんのわずかという指摘もある。サプリメントの内容にも注意を払う必要がある。

ビタミンCの過剰摂取について、いつも問題視されるのがその副作用である。 そのひとつは下痢、2番目に胃への負担、三番目に腎臓結石である。私と家族は現在1800mgのビタミンCを一日に摂取している。とりわけ私は18年それを続けている。しかし、その副作用はいまだ経験していない。下痢もない。元々ビタミンCは酸性で胃を痛めるというが本来、胃の中は胃酸で強酸性である。私は年に2回、頭のてっぺんから骨盤の底までCTにてチェックするが。腎臓を含め尿路結石は未だ出来ていない。確かにビタミンCの一部は代謝されてショウ酸という物質に変化し、尿路結石につながるとの説はあるが、諸説があり見解が分かれているし、物事にはすべてに光と影がるもので光だけのものはない。影の部分がでたら中止すれば、また、軽減すれば良いということである。 本来ビタミンCは水溶性で過剰なものは尿中に排泄されるというメカニズムがあり、私はこれらの副作用を全く気にすることはないのではないかと考えている。この件に関しては影の部分を強調しすぎているように思える。(確かに私は風邪をひいた記憶がない。これは自らだけでなく他も認めるところであり「風邪のつらさがわからない、痛みのわからない医者だ」と皮肉る他もいるくらいである。)

一言、付け加えさせていただく。たまたま私、及び私の家族は1800mg/日のビタミンCを服用している。1800mg/日というのは長年の私の経験則からであるが、私は1800mg/日を推奨しているわけではない。もっとこれ以下でも良いと思う。問題は量より継続である。この方が確かである。なるほど昔の人は良く言ったものだ「継続は力」と。