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第36話 動物学から学ぶ大自然の法則

1 動物の歯の構成とその食性について

我々がもし自然に対し、畏敬の念を持つとしたら、それは、雨、風、雪、暑さ、寒さ、地震、津波、火山活動、といった現象であろう。何故なら、豪雨、豪雪、暴風雨、猛暑、寒波等は、直接、命を脅かす恐ろしさをすぐにイメージし易いからである。
神職の方が詠まれる詔の最後に「かしこみかしこみもうす」も実は、「恐こみ恐こみ申す」と書くことを私の薬師寺の山田法胤神主から教わった。 しかし、我々は、自らの体の中に備わっている自然現象、自然の営みに殆どと言ってよい程、畏敬も感謝の念も持ち合わせていないと言ってよかろう。

我々の体は本当に良く出来ていて、寒い時には「鳥肌」が立って、体温が失われないようにしてくれる。これは表皮の血管が収縮し、熱がうばわれないようにしてくれる訳で、その時立毛筋という筋肉が引っ張られ、鳥肌となるのである。もう少し寒くなると「震え」が出る。この震えも震えることで強制的に筋肉を動かし、熱をつくり出し、ご主人様を凍死から救わんとする体の自然現象なのである。

走ると脈が増加する。これも体が勝手に、走るのに使った筋肉に酸素を補ってやろうとする目的で心臓からの血液量を増やすため脈拍数を増やした訳で、これも自然現象の1つである。

この自然現象を営んでいるのが「自律神経」と言われるものである。
体に頼んだ訳でもないのに黙々と我々の体のコンディションを整える為に働いてくれているのである。頼んでもいないので、この体の仕組みに我々は全くと言って良いほど畏敬も感謝の念も持たないのが現実である。
私は、まずこれが「間違い」だと言い続けて来た。
それを私に教えてくれたのが動物学である。

今回は我々「ヒト」という動物の「食性」について考えてみよう。
動物学を勉強しているといかに「大きな自然の法則」というものが存在するかがよくわかる。この自然界の法則を守っていないのは、「文明社会に生きる人間」だけである。

自然界では、「その動物の食性は、その動物の歯の構成で決まる」という大原則がある。

例えば牛は全て臼歯である。すべてが臼歯であるということは穀物か草しか食べない、ということである。 動物の歯には、臼歯と、門歯と、犬歯の3種がある。

  • 臼歯は 穀物や草を食べるための歯
  • 門歯は 野菜や果物をかじる歯
  • 犬歯は 肉、魚、等動物性食品を引きちぎる歯

各々、目的が違うことが学術的に証明されている。
だから全て臼歯の牛は決して穀物や草以外は食べないのである。
(後述するが、食べてはいけないのである。)
(臼歯と門歯は植物性食物、犬歯が動物性食物を食べる為の歯という事である。)
実はその牛に、人間は、こともあろうか、肉と骨を砕いたもの(肉骨粉)を食べさせたのである。「肉骨粉」、この単語を御記憶の方も多いかと思う。即ち、犬歯を持たない牛に動物性食物を食べさせたのである。子牛は乳で育つ。これは当たり前のことである。その子牛の乳を取り上げ、乳製品の材料に廻し、子牛を肉骨粉で育てようとしたのである。
そうすると暴れる牛が出て来たのである。皆さんが良く御存知の「狂牛病」である。全て臼歯ということは、穀物や草しか食べないという表面的な事を示しているのではなく、犬歯がないということは、動物性食物、特に動物性タンパク質を消化・分解する酵素を持ち合わせていないということで、動物性食物を食べてはならないということまで意味しているのである。

それ故、子牛が食べた肉骨粉の中のタンパク質は、消化・分解されず、異種タンパク、はっきり言って異物として、脳・脊髄に沈着したのである。 実に恐ろしい話である。子牛の飲む乳を乳製品の生産増加に廻し、子牛の成長は安価な肉骨粉で済ます。全て利益追求の経済活動のもたらした悲劇である。

逆にライオンはどうであろう?
ライオンはちなみに全て犬歯である。私はよく、「ライオンも実は野菜を食べたがっている」という題で講演をする。
そうすると殆どの人が「そんなバカな……」とおっしゃるが、実は全て犬歯のライオンには、植物性の食物を消化・分解する仕組が存在していないのである。その証拠に彼らが襲う動物は全て草食動物であり、倒した草食動物の中で真っ先に食べる部位が内臓である。内臓(胃・腸)の中の植物なのである。しかも、草食動物の消化酵素で消化・分解され尽くした植物をライオンは最も効率良く食べる訳である。ライオンが植物を食べたがっている、という証拠に、まず真っ先に内臓を食べるということをお話したが、倒した草食動物の肉を食する量はさほど多くはないのである。大半の肉はその後に続く(待機する)、ハイエナ、オオカミ、鷲、等に食べられるのである。

植物はまず草食動物に食べられ、その草食動物は、肉食動物に食べられる。これが自然の循環なのである。

それでは、いよいよ、この「歯の構成と食性」を「ヒト」という動物にあてはめてみよう。即ち、文明社会に生きる人間にである。

我々人間の歯の構成は、

  • 臼歯が20本
  • 門歯が8本
  • 犬歯が4本

計 32本である。

ここで、2ページ目の各々の歯の役目と食性の関係を見ていただきたい。
ということは

  • 動物性食物を食べる歯が4本
  • 植物性食物を食べる歯が28本

ということで
望ましい食事内容は、

  • 動物性食物が4/32 即ち1/8
  • 植物性食物が28/32 即ち7/8
ということなのである。

そして、この歯の構成の奥に存在する消化、分解、吸収のメカニズムを考えると決して軽く考えてはいけない事実なのである。
これはどこかの著名な学者が言っているのではなく、自然界が示している大原則なのである。
現代の我々の食事内容(食性)はどうであろう?
動物性食物と言うのは、牛、豚、鳥の肉と思ってはいけない。
魚、卵、乳製品(チーズ、バター、牛乳、ヨーグルト……)等、思いがけず多く、我々の日常の食生活は、1/8以上の動物性食物を食べているのが現実である。 決して我々は、自らの歯の構成に添った食性(食生活)ではないのである。
そして、我々の体は、我々が食べたものでつくられ、又、営まれているのである。

私は何もこの1/8ルール(我々は動物性食物の割合を、全摂取食の1/8以内に控えるべき)を厳密に守るべきだと申し上げているのではない。文明の発達、文化の変遷で、我々の食の楽しみは増した。
その食事を楽しむことも、実は心の免疫につながる。心が喜ぶことも必要である。しかし、我々が喜ぶ食事が出来るのも、食べたいものが食べられるのも、「健康」という裏付けがあってのことである。
欲ばかりで食事を楽しんでいると必ず「病」は訪れ、それこそ食べたいものも食べられなくなるのである。
こんな諺がある。
「人は、その自らの食事を1/4は自分の為に3/4は医者の為に食べている」
我々の本来の食性を栄養学をはじめとする学問、知識で制御しようとしても、なかなか無理なことである。
しかし、「このような大きな自然の法則の中に我々も組み込まれているのだ」ということを理解していただければ、少しは欲と道づれの日々の生活にもブレーキになるのでは、と思う次第である。

ここで、野生のチンパンジーのお話をしよう。
チンパンジーは、遺伝子的に「ヒト」という動物に一番近い哺乳類で、歯の構成も同じである。野生のチンパンジーの食性を観察してみると、動物性食物の割合は、全食事量の10%前後である。
一体どんな動物性食物を食べているのだろう?
その殆どは、アリや、昆虫である。しかもそれらはチンパンジーが食べる植物に付着して口に入ったもので、決して好んでアリや昆虫を食べているのではないそうである。その結果、正に歯の構成に合った食生活(食性)をしているのである。(これはあくまでも野生のチンパンジーであって、動物園で飼育されているチンパンジーは別である。)

ところで、またまた「人間は、ろくでもないことをするな〜」と思うのであるが、この野生のチンパンジーをつかまえて、大腸の内視鏡をやっているのである。しかしその結果には驚かされる。
大腸ポリープ、大腸憩室(けいしつ)、もちろん大腸癌、等の病変が皆無なのである。本当に皆無なのだそうである。

ここでは紙面上、詳細な説明は省かせていただくが、大腸ポリープ、大腸憩室、大腸癌、これらは全て動物性食物、及び、脂肪分の取り過ぎが原因として既に証明済みなのである。



2 「身土不二」について

皆さんは、この諺を御存知だろうか?
「身、即ち体、住んでいる人間と、その住んでいる人間がいる土地、地域とは一体である」という意味である。

日本の料理における調理の主体は、戦前は「土鍋」である。土鍋が「フライパン」に取ってかわって、日本人は急速に脂肪分及び動物性食物を食べる量が増えたのである。土鍋で油を使うことはまずないと言ってよかろう。しかし、フライパンは使う限り必ずと言ってよい程、油を引く。日本人が、この日本の土地で動物性食物や脂肪分を多く取ることは決して好ましいことではないのである。

欧米の人達は、日本人よりずっと長く動物性食物を食べ続けているのに、日本人ほど腸内バランスを崩す人は少ない。それはまず、アメリカの野菜と日本の野菜の差によるものである。アメリカと日本では、ナスでもキュウリでも、明らかにサイズが違う。種類が違うのではない。その証拠に日本の野菜の種を持って行き、アメリカで育てると、日本で育てるよりずっと大きな実がなるからである。その理由は、アメリカの土壌に含まれるミネラルやカルシウム、ビタミン等の量が、日本の土壌よりはるかに多いからである。
その差は大体3倍である。アメリカの土壌の方が、日本の土壌より3倍多いのである。
例えばアメリカで育ったホウレンソウのカルシウム含有量は日本の3〜5倍である。ブロッコリーのカルシウム含有量はアメリカ産で178mg/100g、日本産のもので57mg/100gだそうである。
つまりアメリカ人が肉食をしても(動物性食物や脂肪分を多く取っても)こうした豊かな土地で育った野菜を食べている為に、体が酸性になり難いのである。
アメリカと比べて体格差があった日本人も、欧米の食文化の流入でその差は大きく縮まった。ところが欧米並に変えたくても変えられなかったものが「土壌」である。土壌の豊かさだけは真似できなかったのである。
土壌の豊かさは、何もミネラル等の含有量だけで決まるものではない。その他に生息する微生物(土壌菌)等でも大きく左右される。
火山灰地の多い日本の土地は、それらが少ないのである。欧米並みの肉食をしているのに野菜の栄養価が1/2〜1/3しかなければ日本人に肉食の影響が大きく出てくるのは至極当然のことである。
日本の土壌は元々豊かではない。それでも日本で取れた穀物と野菜、近海の魚と海藻類といった日本古来の食事においては十分にそのバランスは取れていたのである。
日本は四方を海に囲まれた豊かな漁場があったのである。自然のバランスというのはそういうものである。

もう一つ、アメリカ人と日本人においてはその腸の長さに大きな違いがあることを御存知だろうか? 日本人の食事は長い間、穀物、野菜が中心であった為、欧米人に対して、1.25倍、長いのである。
腸が長ければ長い程、排泄までに時間がかかり、肉の消化、吸収の残物の腸に与える影響は多い。
実は、動物性食物の消化吸収残分が腸内に長くとどまればとどまる程、腸内細菌の悪玉菌が増えるという事実がある。
アメリカ人の腸の方が、肉の消化吸収残分を速く排泄する為、短くなっていったのか、はた又、植物繊維の多い食事をしていた日本人の腸が長くなっていったのか、その当たりはさだかではないが、とにかく日本人の腸は欧米人に比べ、1.25倍長いのである。
腸内細菌には善玉と悪玉があるのは御存知と思うが、悪玉菌の増加は腐敗を意味し、その為、ガスも臭くなるのである。

そろそろ皆さんも気付かれたことと思うが、「くさる」という字の中に「肉」という字が入っているのである。我々は微生物と共存である。微生物の良い作用を「発酵」好ましくない作用を「腐敗」と言う。
「腐」という字がつくられたのはいつ頃だろう。つくられた頃は、欧米人と日本人の腸の長さの違い、更に、アメリカで栽培される野菜と日本で栽培される野菜の大きさ、そして、日本人に関しては、欧米人と比較して、動物性食物や脂肪分が不利であることがわかっていたのだろうか?

日本人には日本人のルーツがあり、DNAがある。
「グローバルスタンダード」私はこの言葉が嫌いである。
たったこの一言で、欧米の文化、文明をそのまま取り入れ、追いつき追い越せの競争を正当化させた。
「ヒト」という動物には、そして日本という国土に暮らす人間には、それなりの原則というものがある。
正に、日本人こそが一番動物性食物の取り方に、一番、気配りをしなければならない民族なのである。

最近「炭水化物は体に悪い」と言った医者がいるようで、又、その本が売れていると聞いた。肥満の人は確かに炭水化物を減らすことで体重減量の目的は達成できるであろう。
しかし、医者も炭水化物ダイエットする人も、まず自然界における法則をまず勉強すべきである。「歯の構成と食性」を無視しての言動はいかがなものであろうか。

  • 「歯の構成と食性」
  • 「身土不二」

共に大きな自然の法則である。
現代人はもっとこの自然の大原則に、そして先人の気付きに耳を傾けるべきと思うが、いかがであろう?

平成26年2月16日