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第41話 「冷え」をつくらない

今回のテーマは、「冷え」を作らないとしたが、完全に「冷え」をなくすることは不可能である。それは、人間が2足歩行の動物だからである。それ故、必ず重力によって血液は下半身に集中し易い。
又、体温としての熱源となる臓器が上半身に集中している。
これらは改善も再構築できることでもなく、「冷え」を作らない、又、なくすこともその意味では不可能なことである。
「冷え」のシリーズで原稿を書いている途中で、何人もの人が「冷え」は悪いもの、と決めつけているのに気が付いた。それは違う。
「冷え」は人間が生きていく上で必然的に生じる現象の1つであって、「冷え」そのものが悪いのではない。「冷え」に気付かず、又気付いていても、それに注意を向けることなく、「冷え」を悪化、又長期化させたその人個人が悪い訳で、その点を御反省いただけたらと思う。
人はよく、インフルエンザにかかると「インフルエンザウイルス」が悪いと言う。同僚がインフルエンザにかかっていたら、「インフルエンザをうつした同僚が悪い」と言う。
インフルエンザウイルスは通常かなりの人達の体内に進入する。しかしその人がインフルエンザウイルスに打ち勝つだけの免疫力を保持していたら、普通はインフルエンザにかかる事はない。インフルエンザにかかった人には大変申し訳ないが、インフルエンザウイルスに勝てるだけの免疫を有していなかったその人の問題なのである。 日常、「冷え」を悪化、長期化させない気付き・努力・習慣が必要なのである。

大腿、下腿の血流について

我々の足元から心臓に向かって戻る血流の主な主なルートは深部静脈である。その深部静脈の血流スピードを別表に記したのでご覧いただきたい。
別表 深部静脈の心臓への血液寒流スピード
深部静脈の心臓への
血液還流スピード  
体育大学調べ  航空医学研究所の調べ 
立っている時  秒速 8〜10cm  秒速6.3cm 
座った瞬間  秒速5cm  秒速4.4cm 
座って30分経過すると  秒速2.5cm  秒速3.0cm 

1つは体育大学、もう一つは航空宇宙医学研究所のデータで「立っている時」「すわった瞬間」「すわって30分後」の心臓に向かって戻る深部静脈内の血流スピードを比較している。
多分このデータをご覧になって驚かれた方は多いと思う。
実に、立っている時の還流スピードが一番早く、すわると膝、股関節で深部静脈が屈曲し、とたんに心臓に戻る血流は悪化するのである。すわって30分後までのデータしか公表されていないが、一日中、すわりっぱなしの場合はもっと悪化するのは間違いないことである。皆さん方の中には、電車に乗って席にすわれなければ残念に思い、又タッチの差で他人に席を取られたら損をした気持ちになる人も多いかと思うが、実はすわった人こそ「不幸」とまでは言わないが、血流に関しては損をした人なのである。
私は徹頭徹尾、「ものには必ず光と影がある」と申し上げているが、すわって楽かもしれないが、その裏で確実に血流の還流悪化から「冷え」の原因を作り出しているのである。そう思えば、電車ですわれなくても腹も立たず、何か得をした気持ちになれるのではないか、と申し上げておきたい。

ふくらはぎに注目

電車内での話の続きになるが、皆さん方も電車内でつり輪につかまって「つま先立ち」を行なうと良いと言う話をお聞きになったことがあるかと思う。正にこのつま先立ち、ふくらはぎの筋肉の収縮と弛緩を繰り返すことが一番効率的に足元の血液を心臓に戻す手段なのである。
ふくらはぎの筋肉の収縮、弛緩で丁度ミルキングの如く血液を上半身に向けて押し出すのである。
現代人は文明、科学の発展でこと如く歩かなくなった。歩けばそれなりにふくらはぎの筋肉は収縮と弛緩を繰り返し上半身の血液還流を促進出来るのであるが、一日中パソコンに向き合う仕事となり、FAX、メールの通信技術の進歩から、データ・情報を届けるために歩くこともなくなった。最も顕著な例はリモコンであろう。リモコンがなければテレビのチャンネル、エアコンの設定にも少なくとも3〜4メートルは歩いたものを……。
たかが3〜4メートルと言うが、積み重なれば相当な影響力を持つ。その上現代は皆、宅配の時代である。ネット・通販で注文ができ、益々歩くこともなくなった。

確かに人間はいつの日からかはわからないが2足歩行になった。
それ故、これ又確かに下半身の血流は心臓に向けての還流が悪くなった。確かにこれは「冷え」を作ることになった原因の1つである。
しかし、人間だけがふくらはぎに筋肉を有する唯一の動物なのである。
2足歩行するようになったが、その分、歩けば歩くほどふくらはぎの筋肉が発達し、足元の血液を上半身に返す代替の策を体は講じていたのである。
だから、2足歩行になったことが悪いのでもないのである。
2足歩行の「血液還流悪化」という負というか影の部分は、同時にふくらはぎの筋肉発達という現象でプラスマイナス0となっていたのである。
猿のふくらはぎに筋肉は無い。猿は2足歩行ではないからである。問題は、現代人が歩かなくなり、ふくらはぎの筋肉、筋力を低下させ、血液の上半身への還流を悪化させ、下半身に血流を滞らせてしまったことである。それ故の「冷え」の悪化と長期化なのである。

ふくらはぎは「第2の心臓」であると言われている由縁がおわかりいただけたと思う。心臓は血液を送り出すポンプである。
ふくらはぎも、実は足元の血流を心臓に押し戻すポンプなのである。2足歩行と同時にポンプはちゃんと造られていたのである。

もう一つ、ふくらはぎは、「発電所」と呼ばれているのも御存知だろうか? 当然のことながら、ふくらはぎの筋肉を使えば使うほど、熱の産生につながる。そしてその効果は、例えば、

軽い自転車こぎを30分、1日2回、6週間続けると、ふくらはぎから大腿にかけての温度は、非運動時と比べて1.7%上昇するという報告がある。 その気になって、ふくらはぎを使えば、下半身の温度は簡単に上昇するのである。

要は、ちゃんと歩けば良いことなのである。
歩けば、ポンプで血液は心臓に向かって効率よく戻り、筋肉から発生する熱で大腿、下腿の温度は上昇し、「冷え」は存在しても、上半身と下半身の温度差はいくらでも縮小できるのである。
今まで、熱を産生する臓器は上半身に集まっており、下半身にないと言ってきたが、実は下半身にも熱を産生する臓器(筋肉も立派に臓器の1つ)が存在するのである。
「冷え」をいかに改善するかという問題に関しても、一番肝要な策は、実は一番身近なところにあったということである。